エレベーターの「閉まる」ボタンは本当に効いているのか?

知識

エレベーターに乗ったとき、
思わず連打してしまう「閉まる」ボタン。

でも一方で、
「押しても意味ないらしいよ」
「実はダミーだって聞いたことある」
そんな噂を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

はたして、
エレベーターの「閉まる」ボタンは本当に効いているのか?
今回は、その疑問を仕組み・安全設計・海外事情の視点から、
わかりやすく解説していきます。


1. そもそも「閉まる」ボタンは何のためにある?

エレベーターの操作盤を見ると、
ほぼ必ず並んでいるのがこの2つ。

  • 「開」ボタン

  • 「閉」ボタン

直感的には、

  • 開 → ドアを開く

  • 閉 → ドアを早く閉める

と思いますよね。

ところが実際には、
多くのエレベーターで「閉」ボタンは通常時ほとんど機能していません。


2. なぜ「押しても効かない」と言われるのか?

まず結論から言うと、
日本のエレベーターでは、通常利用時に「閉」ボタンが無効化されていることが多いです。

理由はとてもシンプルで、
👉 安全性を最優先しているから


🚸 安全設計が最優先されている

エレベーターは、不特定多数が使う設備です。

  • 子ども

  • 高齢者

  • 車いす利用者

  • 大きな荷物を持っている人

誰が乗るか分かりません。

もし「閉」ボタンが完全に自由に使えてしまうと、

  • 無理にドアを閉めて人を挟む

  • 乗ろうとした人を締め出す

  • 転倒事故につながる

といったリスクが一気に高まります。

そのため日本では、
ドアは一定時間必ず開いた状態を保つ
という制御が基本になっています。


3. 実は「効く場面」も存在する

「じゃあ、閉まるボタンって完全に意味ないの?」
と思いますよね。

実はそうではありません。
効く場面はちゃんと存在します。


✅ 管理モード・特定条件下では有効

多くのエレベーターでは、
以下のような条件がそろうと「閉」ボタンが有効になります。

  • ビル管理者用の操作モード

  • エレベーター係員がいる運転

  • 鍵付き操作盤(病院・ホテル・業務用)

  • 一定時間経過後の補助操作

たとえば病院やホテルでは、
スタッフが専用キーを使って操作すると
「閉」ボタンでドアを早めに閉じられる場合があります。


🏥 病院・業務用エレベーターの場合

病院では、

  • ストレッチャーの搬送

  • 緊急時の移動

  • スタッフ専用利用

といった事情があるため、
一般用とは異なる制御がされていることが多いです。

この場合、「閉」ボタンは
ちゃんと“機能するボタン”になっています。


4. 海外では「閉まる」ボタンが普通に効く?

ここで面白いのが、海外との違いです。

実はアメリカやヨーロッパでは、
「閉」ボタンが普通に効くエレベーターも多く存在します。


🌍 海外エレベーターの考え方

海外では、

  • 利用者の自己責任

  • 利便性重視

という考え方が比較的強めです。

そのため、
「閉」ボタンを押せば、
ドアがすぐ閉まる仕様のエレベーターも珍しくありません。

ただしその代わり、

  • 注意喚起表示が多い

  • 挟まれ防止センサーが強力

  • 利用者側の判断に任される

といった特徴があります。


🇯🇵 日本は「効かせないことで安全を守る」

一方、日本は、

  • 万が一の事故を未然に防ぐ

  • 利用者全員にやさしい設計

  • 誰が使っても同じ安全水準

を重視しています。

その結果として、
「閉」ボタンをあえて効かせない
という設計が選ばれているのです。


5. 「閉」ボタンを押すと早く閉まる気がする理由

「でもさ、押すと早く閉まる気がするんだけど…」

これ、実は錯覚であることが多いです。


🧠 人は「操作した」という事実で納得する

人間は、

  • 自分が何か操作した

  • ボタンを押した

という行為があると、
その後の変化を“効果があった”と感じやすい傾向があります。

実際には、

  • もともと閉まるタイミングだった

  • 開放時間が終了しただけ

というケースでも、
「閉ボタンを押したから閉まった」と脳が判断してしまうのです。


6. なぜボタン自体は残されているのか?

ここまで読むと、
「じゃあ、閉ボタンなんて最初から無くせばいいのでは?」
と思うかもしれません。

それでも残されているのには、理由があります。


① 海外規格・共通デザインの名残

エレベーターは、
国際規格や共通デザインをベースに作られていることが多く、
操作盤の配置もある程度決まっています。

そのため、

  • 開ボタンだけ

  • 閉ボタンなし

という設計にすると、
逆に利用者が戸惑ってしまうのです。


② 将来の仕様変更・管理用途のため

  • 建物の用途変更

  • 管理モードの追加

  • 特定利用者向けの制御

こうした可能性を考え、
ボタンだけは残しておく
という設計が取られている場合もあります。


7. 「閉」ボタンがあること自体が安心材料

実は、「閉」ボタンは
心理的な安心感を与える役割も果たしています。

  • 早く移動したい

  • 早く出たい

  • 操作できている感覚が欲しい

そんなとき、
「閉」ボタンがあるだけで
人は少し落ち着くのです。

つまり、

機能よりも“存在意義”が重視されているボタン

とも言えます。


8. まとめ|「効かない」のは欠陥ではなく設計思想

エレベーターの「閉まる」ボタンは、

  • 押しても反応しないことが多い

  • でも完全なダミーではない

  • 安全性を最優先した結果の仕様

というのが真実です。

✔ 日本では「事故を起こさない」ために効かせない
✔ 海外では「利便性」を重視して効かせる場合もある
✔ それぞれの国の価値観が反映されている

次にエレベーターに乗ったとき、
ぜひ操作盤を見ながら思い出してみてください。

その小さなボタンには、
人の行動と安全を考え抜いた設計思想が詰まっているのです。

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